2010年10月08日

「最近の中国情勢」B尖閣諸島事件―結果は中国にとってもマイナス

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中国の一般国民にとって、釣台島(中国では尖閣諸島のことをこう表現)問題は外国の話だ(山東省済南市で)

古屋氏講演第三弾は「尖閣諸島漁船衝突事件」の波紋と、若干のこぼれ話です。
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先ほど谷井会長が「日本人の方が外国人より変わっている。外国との折衝が極めて少なかった民族であることを何よりも自覚する必要がある」と、故梅棹忠夫先生の言を借りて紹介されました(当ブログ5日付)。まさに尖閣諸島問題は、中国がこういった日本人心理の虚を突いた事件だったといえる。日本人は自分たちが良いと思っていることは、相手を含め世界の人々が良いことだと理解してくれると思いがちですが、決してそうではない。黒船襲来―明治維新の例を引くまでもなく、外圧は常に虚を突いてやってくるものだ。

9月7日に発生した尖閣問題は、事故ではなくあくまで事件だといえる。19日に拘留期限を延長し、21日には米国で温家宝首相が日本の非難演説をした。25日には船長を釈放したにもかかわらず、中国は「謝罪と賠償」を日本に要求、その後こう着状態の中で徐々に歩み寄りを見せている。

この間、中国は「報復」と思われる措置を相次いで発動した。閣僚級の交流中止、レアアースの対日輸出停止(中国政府は否定)、日本向け輸出貨物の抜き取り検査を30%から100%に引き上げ、民間ツアー交流の中止、民間企業フジタ社員の拘束などだが、円高誘導、事業許認可の遅延、日本品不買などの可能性もあった。

背景には、影響力を増大したいとする中国の意思表示、中国の海洋権益拡大、民主党政権の政治空白、与党政治家による中国への刺激発言、日米同盟の弱体化などがある。ただしっかり見る必要があるのは、日本のメディアでは「日本敗北、中国勝利」が大勢だが、決してそうではない。むしろ今回の事件及び一連の措置は、中国にとってマイナスになったといえるかもしれない。

繰り返すように元来、日本は政府も民間も外圧にはからっきし弱く、いわんや民主党政権はいま仮免許中、仮設住宅にまだいる状態だ。そういった中で日本は、一応やることはやったといえる。まず「拿捕、拘束、取り調べ、釈放」という一連の国内法に基づき粛々と法手続きに則ったことを世界に知らしめた。ふたつ目は国内外に「尖閣諸島は日本の領有権」だということを広く知らしめた。更に3つ目は近隣のアジア諸国はもとより世界に中国の怖さを教えた。そして何よりも、米国から「尖閣は日本領土。日本の施政下にある地域は安保条約第5条の適用範囲」との言質を、あらためて獲得できたことが大きかった。 

逆に中国は、国際社会において「中国脅威論」を惹起してしまった。また日本に対する経済制裁や民間企業社員の拘束で、日本企業の中国ビジネスに逆風が吹くこととなった。こういった経済摩擦は、日本も困るがそれ以上に中国にとっても困ることになる。先述したように中国は2012年に新政権の誕生が予定されており、この新政権は2020年までの2期8年間、世界との協調の中で生きなければならない。それが結果的に、全世界に中国脅威論を植え付けたわけだ。

今後、ベルギーでのASEM(不自然ながら両国首相が会談)、11月の横浜APECでの日中首脳会談の実現、10月下旬の中国5中全会と軍幹部の人事異動、中国のナショナリズムの動向、拘束されているフジタの残る一人の釈放次期などの動きが注目される。
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中国では、新しい施策に取り組む際、いつも特定の地域で実験する手法をとってきた。その際の舞台は大概が北京と離れた広東省だ。経済開放の先駆地として「特区」第一号に指定されたのは同省の「深セン」(土ヘンに川)だった。また同省では、中国で初めて人民がトップを選挙で選ぶ実験が進んでいる。そして今、注目されているのが公営競馬の「競馬特区」構想だ。すでに北海道の日高で400頭のサラブレッドが、一頭当たり3千万円で成約されたとの話も聞く。調教師等のノウハウ伝授なども着々と進みつつあるそうだ。中国の人はもともと、ギャンブル好きで射幸心理が強い。政府が進める「内需拡大」策にもマッチするとされている。
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もうひとつのこぼれ話。新華社によると、いま中国で「菊と刀」の本が大ヒットしているそうだ。政府関係者、学者、エコノミスト中心にすでに300万部売れているとか。同書は言うまでもなく米国の女性文化人類学者ルース・ベネディクトが著した日本研究の名著で、戦後米国による対日政策に大きな影響を与えたとされている。それが今、中国でも日本研究のベスト教材として取り上げられている。(おわり)
posted by ウツボおやじ at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
すいません
1年も過ぎているのに仮免はないのでは?
1年生議員揃いの内閣だと理解できますが
仮にも与党経験がある方々が多いですよ。
尖閣の釈放問題でも検察に押し付けてしますし
これが「政治主導」でしょうか?

>「尖閣は日本領土。日本の施政下にある地域は安保条約第5条の適用範囲」

米は基本的に「領土問題には介入せず」です。
過去のフォークランド紛争でも然りですし
これは過去の発言から進捗は全くしていないのが
現実です。
(その後の会見で其々の定義について報道があります)
「領土問題は存在せず」の言葉通り、問題化するのは日本にとってはかなり不利な状況である
事は認識された方が良いかと思います。
その状況の中で船長釈放は世界中からどれほど
呆れられたのか・・・

宰相不幸社会はまだまだ続きますので
笑うしかないのも現実かもしれまんが(笑
Posted by 通りすがり at 2010年10月11日 15:46
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