2010年04月15日

「クレープ」って何を想像しますか、実は伝統ある織物なのです

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川島織布の川島好行さん。大阪の展示会で自社のイチ押し商品を前に

 「クレープ」といって繊維テキスタイルを想像する人は、いまや100人中1人いるかいないかでしょうね。繊維業界にあっても、50歳代以下はほとんどの人がフランス菓子の薄いパンケーキと答えるはずです。ヤフーで「クレープ」を検索してみると、実に2170万件の例がありました。グーグルでも280万件です。ヤフーの各種辞典では「強撚糸(きょうねんし)を使った縮緬(ちりめん)や、縮(ちぢみ)などの総称」など、繊維テキスタイルであることをはっきり説明しているだけに、ひょっとしたらと思って検索してみました。さっぱり当たりはありません。途中で「クレープ生地」とあるから、おおこれはとサーフィンしていくと何のことはない、パンケーキも「生地作り」が基本なのですね。結局1000数件目で止めてしまいました。
レストラン

 「クレープ」とは元来、ヨコ糸に強い撚りをかけた糸を使って織る織物で、ちぢみ、楊柳などとも呼ばれ、また絹素材の場合は「ちりめん」の名が一般的です。生地の面に“シボ”感が出るために吸汗・速乾に優れ、さらっとした肌触りも生きて高温多湿の日本の夏には最適の素材といえます。このため直接肌に接する肌着、パジャマ、ベビーウエア、布団カバーなどに使われています。実はパンケーキの「クレープ」も、1600年ころに貧しい仏・ブルゴーニュ地方で生まれたもので、焼いた際に表面化する“こげめ”模様が、シルクのちりめんを連想させるとしてクレープと呼ばれるようになったそうで、名前の発祥はやはり繊維でした。

 団塊世代のわれわれオヤジなんぞは、夏に身につける綿クレープのステテコとU首、V首、さらには前ボタンの肌着の味を忘れることはできません。昭和40〜50年代まで、日本のお父さんの夏の下着はこのクレープがごく一般的でした。お母さんもクレープのシュミーズ・スリップを身につけていました。しかしそれをダメにしたのが、植木等だといわれています。例のステテコと肌着、腹巻スタイルで帽子をかぶって「お呼びでない?……お呼びでないね。こりゃまた失礼いたしました!」なんてやるものですから、「クレープのステテコ=ダサい」になってしまったというのがその理由です。その真意はともかく、家庭でも店頭でもクレープ肌着の地位は低下していったのです。

 ところで、日本にあってその綿クレープ織物を生産するのが滋賀県にある高島産地です。琵琶湖の西北に広がり今は高島市となっていますが、かつての高島郡新旭町と安曇川町が中心です。JR湖西線の近江今津の大阪寄り2駅が安曇川駅と新旭駅で、その湖西線と国道161号線を跨いで比良山系から琵琶湖畔までの、実にのどかで風光明美な産地です。日本海側の気候のため冬は寒く雪も結構多く、秋は高島しぐれという降雨にも泣かされます。1974年に湖西線が開通した時、「湖西線開通記念・高島織物産地」という特集を新聞で掲載した記憶があります。湖西線が開通するまでは浜大津から161号線をバスで高島に行きました。今でも北陸に出かける際、車窓から高島産地をみるたびに自転車で雪の中を駆け回った若い記者時代を思い出します。

 高島産地の織物生産は江戸末期1780年ころ、農家の冬期の副業として始まったそうです。その後「高島ちぢみ」として人気を呼び、かつては撚糸業者だけでも20社近く、織物生産の機屋は60数社、さらに整理加工業者(今でも高島晒協業組合として操業)や周辺企業が多数ありました。しかし今では撚糸業者は数社で、実際に稼働している機屋は15社ほどに減っています。ひとつには、中国からのクレープ肌着の大量輸入も影響しています。もっとも同産地には、自動車用など産業資材や帆布などの厚地織物を生産する機屋もあり、クレープなどの軽布機屋に対し重布機屋と呼ばれ現在30社ほどが稼働しています。

 軽布、重布両機屋の集まりである高島織物工業組合では、クレープ素材が春夏シーズンを快適に暮らせるコットン素材として位置づけ、レディースやメンズのアウター用として開発に取り組んでおり、このほど東京と大阪で展示会を開きました。この展示会では出展各社が自社のイチ押しテキスタイルを二次製品化して出品するとともに、女子大生がデザインした彼氏に履かせたいステテコ「彼テコ」を展示するなど、来場バイヤーに強くアピールしていました。

 同織物組合の理事長を務める川島諦氏の川島織布もそのうちの1社。同社は大正4年に創業を始めてから95年余、クレープと工業資材を手掛けてきましたが、現在はエアジェットという新鋭織機27台で高級クレープ肌着、同じクレープ素材によるインナーウエアやアウターウエア向けテキスタイルを生産しています。同社の川島好行さんは以前、医療関係のお仕事に携わっておられましたが、10年ほど前に川島家の入婿となり織布業に毎日汗を流しています。「やはりモノを作るというメーカーの楽しさは格別です。クレープでベビー用品を開発し、実際にそれが製品化されて店頭に並びました。近くのショップに、わざわざ買いに行きましたが、自分で作ったモノが実際にお客様の手元に届く。これは何物に代えがたい喜びです」と目を輝かせていました。

 繊維産業に限らず、日本におけるモノつくり現場は停滞の一途をたどっています。しかし川島好行さんのように、地味ではあってもメーカーとしての喜びを感じて地場産業の継続に邁進する人たちがいる限り、まだまだ日本の製造業は生き残れると思うのです。
ブティック

 レストランやカフェなどで美味しい「クレープ」をいただく時、ちょっとだけシャリ感があって肌に優しいクレープテキスタイルを思い浮かべていただければ幸いです。
posted by ウツボおやじ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記
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